暮らしのレシピ帖

体に優しいおばあちゃんの料理5選
——薬に頼る前に、台所に立ってみる

「食べれば元気になる」は、おばあちゃんの口ぐせだった

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なんとなく体がだるい。胃が重い。食欲がない。そんなとき、おばあちゃんはいつも台所に立っていた。サプリでも栄養ドリンクでもなく、鍋ひとつで作る「体に優しい料理」がそこにあった。

なんとなく体がだるい。
胃が重い。食欲がない。

そんなとき、つい手が伸びるのはコンビニのゼリー飲料や栄養ドリンクだったりする。
悪くはない。でも、本当に体が求めているのは、もう少し温かいものかもしれない。

おばあちゃんは、家族の調子が悪いとき、いつも台所に立っていた。
「食べれば元気になる」が口ぐせだった。

おばあちゃんの料理が体に優しい理由

おばあちゃんの料理には、現代の「ヘルシー食」とは違うやさしさがある。

・素材の味がそのまま残っている
味つけは最小限。
醤油と出汁と、あとは素材そのものの味。
余計なものを足さないから、体に負担がかからない。

・温かくて、消化にいい
煮物、汁物、粥。
おばあちゃんの料理は「煮る」が基本だ。
火が通った野菜は消化がよく、温かい汁は体の芯からほぐしてくれる。

・旬のものを使っている
おばあちゃんは「今あるもの」で料理を作った。
それは自然と旬の食材を使うということ。
旬の野菜は栄養価が高く、体がそのとき必要としているものと重なることが多い。

それでは、体がちょっとしんどいときに寄り添う5品を紹介する。

① 茶粥——胃が疲れたとき、まずこれ

お米をほうじ茶で炊くだけ。
それだけで、胃にすっと染み込む一杯ができる。

和歌山のおばあちゃんたちは、これを毎朝のように食べていた。
「おかいさん」と呼んで、特別なものではなく日常食として。

飲み会の翌朝、風邪の引きはじめ、食欲がない夜。
どんなときでも、これだけは食べられる。
塩をひとつまみ入れるだけで、お茶の香りがぐっと引き立つ。

胃が「もう何も受け付けない」というとき、最初に試してほしい一品。

② けんちょう——体を温めたいとき

山口のおばあちゃんが日常的に作っていた、大根と豆腐の煮物。

大根は消化を助ける酵素を含んでいるし、豆腐はたんぱく質が摂れる。
どちらも胃に負担をかけない食材だ。

豆腐を手で崩しながら入れるのがおばあちゃん流。
崩れた豆腐が煮汁を吸って、なんとも言えない滋味深さになる。

体が冷えているとき、じんわりと内側から温めてくれる。
食べ終わる頃には、少しだけ元気が戻っている。

③ たっぷり昆布のごった煮——栄養をじっくり摂りたいとき

富山のおばあちゃんが作る、昆布と根菜をたっぷり煮込んだ一品。

昆布の旨みが全体に行き渡って、出汁を別で取る必要がない。
鶏肉と根菜から栄養が溶け出した煮汁ごと、ゆっくり食べる。

「ごった煮」という名前の通り、冷蔵庫にあるものを何でも入れていい。
おばあちゃんは「もったいない」の精神で、余った野菜を全部鍋に入れた。
そのおおらかさが、結果的に栄養バランスのいい一皿になっている。

体力が落ちているとき、一口ずつゆっくり食べてほしい。

④ ふきの煮物——体をリセットしたいとき

春に出回るふきを、薄味でさっと煮たもの。
佐賀のおばあちゃんが、春先になると必ず作っていた。

ふきのほのかな苦みには、冬の間にため込んだ体の重さを流してくれるような清涼感がある。
昔の人が「春の山菜は体の毒を出す」と言っていたのは、あながち迷信でもない。

派手さはないけれど、食べると体がすっきりする。
そういう料理をおばあちゃんは「薬みたいなもんだ」と言っていた。

⑤ いもがらの煮物——なんとなく調子が出ないとき

里芋の茎を乾燥させた「いもがら」を、油揚げと一緒に煮たもの。
宮城のおばあちゃんが常備菜として作り置きしていた。

食物繊維が豊富で、お腹の調子を整えてくれる。
地味な見た目だけれど、油揚げの旨みを吸ったいもがらは、噛むほどにじんわりおいしい。

「なんとなく調子が出ない」というぼんやりした不調に、こういう素朴な一品が効く。
体が必要としているものは、案外シンプルなのかもしれない。

「食べる」ことの力

おばあちゃんは、栄養素の名前なんて知らなかったと思う。
ビタミンがどうとか、食物繊維がどうとか、そういう話はしなかった。

でも「風邪には生姜」「胃が疲れたらお粥」「春は山菜」と、体の声に合わせた料理を作ることだけは、確かに知っていた。

サプリメントもプロテインも便利だけれど、鍋で煮た野菜のやさしさには、数値では測れない何かがある。

体がしんどいとき。
まず台所に立って、鍋に水を入れて、火をつけてみる。
それだけで、少しだけ気持ちが前を向く。